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田中 俊弘 教授

比較文明文化専攻
田中 俊弘 教授
TANAKA, Toshihiro
筑波大学大学院博士課程(後期)歴史・人類学研究科単位取得退学。カナダ・カールトン大学留学。日本カナダ学会理事。著作に『平原カナダの研究』日本カナダ学会学際研究ユニット報告集(2012年5月・共著)など。

カナダ近代史を研究することで、米国中心の北米史を相対化

カナダの戦間期(1920~1930年代)を中心とした近現代史を研究テーマにしています。同じ北米大陸にあって米国とはいろいろ対照的な国です。たとえばカナダの現人口は米国の10分の1の3400万人です。健康保険は100%国家負担。米国と違って奴隷制度もありませんでした。カナダは米国と同じく英国の植民地でしたが、独立戦争によって宗主国・英国とケンカ別れした“乱暴な長男”米国に対して、いつ独立したかも定かではない“忠誠な長女”と言われています。また、カナダは米国と異なり、歴史上、フランスの影響も強く、それも手伝って米国よりも多民族・多文化共存の意識が早く芽生えた国家でもあります。このようにカナダは、隣接する米国と成り立ちが異なり、必然的に米国に対抗意識を持ちます。経済や文化面で圧倒されているためコンプレックスを抱きがちですが、一方で自分たちは “Better North America”を体現しているという誇りを持っています。私にとってカナダという国は、実にユニークな存在です。

私は特にカナダ西部の農民の政治運動に関心を持っています。たとえばアルバータ州では、農業団体がある時期に政権を握るなど、他には見られない政治状況が発生しています。全体主義、社会主義、平和主義……様々な思想を背景にした同地域の農民運動の変遷をたどりながら、政治は平和にいかに貢献できるのか、民主主義体制の本質とは何かを探っていこうと思っています。

多民族・多文化共存を強調するカナダではありますが、近年は他の欧米諸国と同じく異文化同士の衝突といった問題も噴出してきています。宗教や思想、雇用や生活スタイルなどにおいて様々な問題が横たわる今、多文化主義を受け入れてきたカナダという国家が、「世界政府」のモデルケースを創造し得るのかと注目しています。

カナダの政治史を研究するのは、おそらく少数派でしょう。しかし混迷する現代にあって、多くの人とは異なる視点を持って世界を見つめることは大切だと思います。大学院で研究する人には、色々な学会に出席し、人の意見に耳を傾け、自らの意見を発信して交流を深めてほしいし、他流試合を恐れず、積極的に打って出て自らの知性を磨いてほしいと思います。