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永井 四郎 教授

永井 四郎 教授
NAGAI, Shiro
関東学院大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。著書に『市場経済と技術価値論』麗澤大学出版会(2007年)、『応用現代経済学(増補版)』麗澤大学出版会(2010年)などがある。

新しい環境税理論を構築。

私は理論経済学が専門で、現在は環境政策理論を中心に研究しています。環境税については、1990年にPearce=Turnerが提唱した理論が定説になっていますが、それが根本的に誤っていることを3つの点で論じています。専門的な話になりますが、第一に「限界外部費用曲線と各企業の集計化された限界利潤曲線の交点で最適課税が定まる」とする結論は誤りです。目標とする汚染の削減を達成するには、私が提唱する「税率・削減量曲線(T-A曲線)」を利用しなければなりません。第二に、現行理論の命題「社会的厚生は私的効率と相矛盾しない」は、残念ながら理論的根拠を持たないということです。ただし完全競争の下でそうなるということです。そして第三に、「環境税は汚染物質の除去をもたらすイノベーションを誘発する」という定説にも、理論的根拠はありません。これまで環境税は排出源者に常に税の支払いが要求されるので、企業はその負担を減らすためにイノベーションを実現するという見方が浸透していましたが、それは理論的に誤りです。正確にいえばある一定以上の高い税率が課されてはじめてイノベーションの可能性が生まれるのです。私のこれまでの研究結果からすると、イノベーションの可能性は、直接規制か排出権取引で高くなります。以上の論点は、20年にわたって定説となっていた環境税理論の土台を覆したことを意味しますので、その影響は予測がつかず、ドキドキしてその反響を待っているといったところです。 Pearce=Turnerの理論が瞬く間に学界に浸透した背景には、環境問題が急速に注目され、それを説明する経済理論の構築が急がれたことが原因かもしれません。理論的にもまさに美しい定式化だったため、私自身も何の疑問も持たずに信用していました。しかし、私は「効率と厚生は矛盾する」という経済的世界観を持ち続けていましたので、どこかがおかしいという感性が働いたのだと思います。 理論経済学に携わる人は「時空にまたがる軸を見出す」「時代の声を聞く」「社会の秩序を探る」といった3つの視点が必要です。その上で、時間をかけて自分の世界観を創り上げ、そこから経済世界を認識し、客観的手法で叙述していくことが大切だと思うのです。