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下田 健人 教授

下田 健人 教授
SHIMODA, Tatehito
慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。本学経済学部長。(財)高年齢者雇用開発協力会調査研究部専門員を経て、本学に着任。APEC(アジア太平洋経済協力)の人材養成部門(厚生労働省所管)のプロジェクト議長を務める。著書に『働く元気とエグゼンプト』麗澤大学出版会(2008年)ほか。

あくまでも人を中心に据えて、経済を考える

経済学の流派はいろいろありますが、私の研究テーマは「ひと」です。統計分析や数字だけでは世の中はわかりません。なぜなら社会は人間が構成しているものであり、まず人をつかまないと本当の経済学は成り立たないと、私は信じて研究してきました。世界的な経済不安の状況にあって、喫緊の課題は失業問題の克服です。この30年来、厚生労働省の要請で、労働政策にかかわる提言を行っています。その中で最近、とみに思うのは次の3点です。まず社会的弱者の増大。仕事に就けない若者、貧困、生活保護者の増加が見られるのは、先進国日本でも顕著です。途上国同様、次にディーセント・ワーク。人間としての尊厳を保持し、最低限の文化的な生活を営める全うな仕事をいかに保障するか。そして“あまねく広がる成長(inclusivegrowth)”。経済成長のもとで、取り残された障害者や高齢者など、社会的な弱者とともに幸福を築く社会の実現です。

従来“持続可能な開発・発展(sustainable development)”がしばしば強調されましたが、同様に障害者や高齢者を含めた“あまねく広がる成長”をいかに実現するかが課題です。社会的にスポイルされてしまった人たちを救済する職業能力開発、労働政策を考えていかなければいけません。フィールドワークやアンケートを行う一方、APECの職業能力開発会議議長を務めており、厚生労働省をはじめとする関係者と意見を交え、深めながら雇用対策の提言を行っています。ただ言いたいのは、アンケートなどの定量調査を行うにしても、現場にいる一人ひとりのことばを重視し、分析・研究に採用していこうと考えています。とにかく経済学の中心に、人を置くというのが私の流儀です。

経済学の研究者を目指す皆さん、社会にはまず人ありきです。このような政策をもってすればGDP(国内総生産)が上昇する、と言ったことばかりに気をとられず「人への愛」や「人が生きるために」といった観点を堅持して、“あまねく広がる成長”の実現に向けて、経済学を修めてほしいと私は願ってやみません。