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阿久根 優子 准教授


経済研究科
阿久根 優子 准教授
AKUNE, Yuko
筑波大学大学院博士課程農学研究科単位取得満期退学。
著書に『食品産業の産業集積と立地選択に関する実証分析』筑波書房(2009年)、「東アジアにおける日系加工食品企業の海外立地選択での垂直的・水平的産業集積効果」『2009年度日本農業経済学会論文集』(2009年・共著)など。

新経済地理学と応用一般均衡分析を駆使して、フードシステムのモデル化に取り組む

農業や食料に関する経済現象は、食品企業の急速な海外進出のようなグローバリゼーションと、農産物生産や味覚の地域性などのローカリゼーションといった二つの空間的な広がりが同時に存在しています。それらの中で、農業から食品加工・流通、そして消費といったリンケージ(連関・連鎖)が複雑に形成されています。メインの研究テーマは、このリンケージを中心としたフードシステム。

分析の理論的な枠組みは、日本の藤田昌久先生、ノーベル経済学賞を受賞した米国のP.クルーグマン、英国のA.J.ベナブルスによって提唱された『新経済地理学』です。これは、ミクロ経済学でおなじみの一般均衡理論に空間の概念を導入し、経済活動の自己組織的な集積と分散を説明したものです。私は、この理論枠組みに基づきながら、日本の地方の地域経済、あるいは国際経済の中でのフードシステムのメカニズムや地域での役割について研究を進めています。

具体的には、次の二つです。一つは、日本の食品企業が海外立地を選択する条件の分析や、東アジアにおける日本が有する食品の需要と供給のポテンシャルについて計量経済学的手法を用いながら探っています。こうした中で、グローバルにおける日本の食品生産の垂直的なリンケージを実証することが目的です。もう一つは、国内の複数の緑茶生産地での茶葉生産者、中間財加工業者、ブレンダー(茶商)の活動や競争状態の違いによる各地域内・地域間での影響を、応用一般均衡モデルを用いて定量的に分析しています。この分析手法は、農業、食品加工そして流通といったフードシステムをモデルの中で明示して分析できることが魅力です。現在、温暖化に伴う農業の適応技術導入によるフードシステムを含めた経済効果についての分析も行っています。

経済のグローバル化の流れは、年々加速しており、日本のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加問題をはじめ、諸外国とのFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)の一層の推進は避けて通れないでしょう。この世界的な潮流の中で、持続的な農業と安全な食料の確保といった点で、フードシステムのモデル化を確立し、現代経済学とともに社会にも寄与できればと思っています。

理論はいつもエレガントです。必ずしも現実が理論とマッチするとは限りません。しかし、辛抱強く現実を見つめ続け、実証研究で理論と現実を結び付け、双方にフィードバックするところに、この学問の醍醐味があると確信しています。