経済研究科ECONOMICS AND BUSINESS

経済研究科 インタビュー

インタビュー

ラウ シン イー 教授

アジア新興国の台頭による
日本とのこれからの関係の変化に注目

専門はアジア経済にかかわる研究です。日本は戦後、アジアにおいて先進国としてアジア諸国への経済援助と投資を行ってきました。しかし、近年はマレーシアやインドネシアなどに代表されるように、新興国の台頭でその関係が変貌を遂げつつあります。今までの日本からのカネ・モノ・技術の一方的な流通に変わって、人的交流がアジア諸国と日本との経済的な関係を変化させつつあります。とりわけ注目すべきは、アジアや中東のイスラム圏諸国の欧米から東南アジアと日本へのシフト。9.11米国同時多発テロ以降、西洋各国のイスラム教徒に対する偏見は強まり、アラブ諸国の富裕層はリゾート地に欧米を避け、ムスリムとの軋轢のない日本を選ぶようになってきています。しかし、日本にはハラール(イスラム法で食べることが許されている食材・料理)など、イスラム文化への対応ノウハウが乏しい。

日本は身近なアジア圏のイスラム諸国から学ぶ時代になってきた。麗澤で学んだ院生たちには、この事実を踏まえてアジアと日本とのかけ橋を目指して、研究に励んでほしい。
経済の自由化を目的とした環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が、いよいよスタートします。世界的な経済統合はかつてない勢いで進展しており、経済学の研究者には定期的に貿易、投資、サービス、そして、人の動きを研究することが求められています。経済のグローバル化が進めば、国際間の経済活動の研究成果を実業界の実務に反映させる必要性が、今以上に重要になってきます。私は院生には現在起こっていることに密着して研究しろと言っています。面倒でも、時間がかかろうとも結論を出すまでのプロセスが大切。それが研究者としての成長につながる。これからも若い人たちと一緒に研究を続け、新たな研究成果を社会に還元させたいと考えています。

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ラウ シン イー 教授 LAU, Sim Yee

東北大学大学院国際文化研究科博士後期課程国際文化交流専攻修了、博士(国際文化)。論文に「アジアにおける日本のリーダーシップ」『世界の中の日本の役割を考える』慶応義塾大学出版(2009年)。アドバイザリースタッフとして、軍主導から民主新体制に移行したミャンマーの経済発展のために、現地の知識層の育成と研究活動の奨励に力を注いでいる。

上村 昌司 教授

困難なリターンの研究に敢えて挑戦
新たなファイナンス理論の道を探る

90年代頃から数学や統計学、コンピュータサイエンスを駆使したさまざまな金融商品の開発が行われるようになりました。応用数学を専攻していた私にもこの分野で何かできることがあるかもしれないと思い、現在はリスクとリターンの学問である「ファイナンス」の研究を行っています。
ここ何年かはリターンの研究に焦点を当てています。ひとつは多国籍企業の資本コストの研究です。リターンは投資をされる企業の側から見ると資本コストという概念になります。資本コストは企業が投資家に投資の見返りとして支払うコストです。そうであるならば、できるかぎり資本コストを減らしたい企業は、分散投資をすればリスクが減少するというファイナンスの基本的な理論に基づき、多国籍展開を進めることを考えるでしょう。ところが、多国籍企業と国内企業の資本コストを比較する実証分析を行うと、多国籍企業の資本コストのほうが小さいとは必ずしも言えないことが分かりました。

従来の投資理論の多くはリスクとリターンが正確に予測できることを前提としています。しかし、リターンは推定誤差が大きいため、リスクと比べると推定が困難であることが知られています。そうするとリターンの正確な予測を必要とする投資理論は上手く機能しないことになります。私はリターンの難しさについて研究をしながらも、逆にリターンの予測を回避したうえで、どのような投資戦略が考えられるかを研究しています。資本コストと投資戦略の2段構えで、実務に役立つ新たなファイナンス理論の知見を発見したいと希望しています。

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上村 昌司 教授 KAMIMURA, Shoji

東京工業大学理学部情報科学科卒業。東京工業大学大学院情報理工学研究科数理・計算科学専攻修士課程修了、東京工業大学大学院情報理工学研究科数理・計算科学専攻博士後期課程修了、博士(理学)。訳書に『クレジットリスク』〈原著『Credit Risk』(D. Duffie and K.J.Singleton著)〉共立出版(2009年共訳)。

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