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経済研究科 インタビュー

世界を探究し、世界に発信する麗澤

経済研究科

ラウ シン イー 教授

ラウ シン イー 教授
LAU, Sim Yee
日本語教育学専攻

東北大学大学院国際文化研究科博士後期課程国際文化交流専攻修了、博士(国際文化)。論文に「アジアにおける日本のリーダーシップ」『世界の中の日本の役割を考える』慶応義塾大学出版(2009年)。アドバイザリースタッフとして、軍主導から民主新体制に移行したミャンマーの経済発展のために、現地の知識層の育成と研究活動の奨励に力を注いでいる。

アジア新興国の台頭による日本とのこれからの関係の変化に注目

専門はアジア経済にかかわる研究です。日本は戦後、アジアにおいて先進国としてアジア諸国への経済援助と投資を行ってきました。しかし、近年はマレーシアやインドネシアなどに代表されるように、新興国の台頭でその関係が変貌を遂げつつあります。今までの日本からのカネ・モノ・技術の一方的な流通に変わって、人的交流がアジア諸国と日本との経済的な関係を変化させつつあります。とりわけ注目すべきは、アジアや中東のイスラム圏諸国の欧米から東南アジアと日本へのシフト。9.11米国同時多発テロ以降、西洋各国のイスラム教徒に対する偏見は強まり、アラブ諸国の富裕層はリゾート地に欧米を避け、ムスリムとの軋轢のない日本を選ぶようになってきています。しかし、日本にはハラール(イスラム法で食べることが許されている食材・料理)など、イスラム文化への対応ノウハウが乏しい。日本は身近なアジア圏のイスラム諸国から学ぶ時代になってきた。麗澤で学んだ院生たちには、この事実を踏まえてアジアと日本とのかけ橋を目指して、研究に励んでほしい。

経済の自由化を目的とした環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が、いよいよスタートします。世界的な経済統合はかつてない勢いで進展しており、経済学の研究者には定期的に貿易、投資、サービス、そして、人の動きを研究することが求められています。経済のグローバル化が進めば、国際間の経済活動の研究成果を実業界の実務に反映させる必要性が、今以上に重要になってきます。私は院生には現在起こっていることに密着して研究しろと言っています。面倒でも、時間がかかろうとも結論を出すまでのプロセスが大切。それが研究者としての成長につながる。これからも若い人たちと一緒に研究を続け、新たな研究成果を社会に還元させたいと考えています。

経済研究科

髙 巖 教授

髙 巖 教授
TAKA, Iwao

早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了、博士(商学)。京都大学経営管理大学院客員教授のほか、国民生活審議会専門委員(内閣府)、運輸審議会専門委員(国交省)、産業構造審議会保安分科会委員(経産省)などを歴任。SCCE国際企業倫理コンプライアンス賞受賞(2008年)。著書に『ビジネスエシックス』日本経済新聞出版社(2013年)など。

時代とともに変遷する“あるべき”企業倫理の確立に向けて

企業倫理をめぐる価値論を一貫して研究してきました。現在の研究テーマは2つ。まず共同研究として「日本航空の経営破綻と再生」をテーマに取り組んでいます。同社は、経営再建を要請された京セラ創業者の稲盛和夫氏が会長に就任後、会社更生法の適用からわずか2年8カ月でV字回復をし、見事に再上場を果たしました。稲盛氏たち経営再建チームは、国家権力によるマーケットへの介入を否定する自由至上主義と、社会的公正を重んじる社会自由主義が浸透していた職場に、第3の社会哲学と言える共同体主義を導入し、従業員の意識改革に成功しました。研究では日本航空の協力を得て、従業員へのインタビューや各種データの分析などで、経営再建のプロセスを検証しようと考えています。

2つ目の研究テーマは「海外腐敗問題」。主に民間企業から外国公務員への贈賄問題に切り込み、グローバル時代にふさわしい企業倫理のあり方を追究しています。これまで日本企業は、国内法を意識したコンプライアンスや内部統制の体制を築いていれば十分でした。しかし年々、海外での売上比率が高くなり、また従業員の割合が大きくなっており、諸外国の法律(とくに、米法、英法)を遵守しなければ、莫大なペナルティが科せられる時代になっています。相反する社会哲学である自由至上主義と社会自由主義ですが、前者は市場取引においてルール違反は許さない、後者は社会的弱者が不利益をこうむることは許さないという立場から、私企業による政府高官などの買収行為を禁止します。日本企業はこの問題に真剣に立ち向かう必要があり、私としてはグローバル時代のあるべき企業倫理の確立に寄与する研究成果になると思っています。

経済研究科

上村 昌司 教授

上村 昌司 教授
KAMIMURA, Shoji

東京工業大学理学部情報科学科卒業。東京工業大学大学院情報理工学研究科数理・計算科学専攻修士課程修了、東京工業大学大学院情報理工学研究科数理・計算科学専攻博士後期課程修了、博士(理学)。訳書に『クレジットリスク』〈原著『Credit Risk』(D. Duffie andK.J.Singleton著)〉共立出版(2009年共訳)。

困難なリターンの研究に敢えて挑戦 新たなファイナンス理論の道を探る

90年代頃から数学や統計学、コンピュータサイエンスを駆使したさまざまな金融商品の開発が行われるようになりました。応用数学を専攻していた私にもこの分野で何かできることがあるかもしれないと思い、現在はリスクとリターンの学問である「ファイナンス」の研究を行っています。

ここ何年かはリターンの研究に焦点を当てています。ひとつは多国籍企業の資本コストの研究です。リターンは投資をされる企業の側から見ると資本コストという概念になります。資本コストは企業が投資家に投資の見返りとして支払うコストです。そうであるならば、できるかぎり資本コストを減らしたい企業は、分散投資をすればリスクが減少するというファイナンスの基本的な理論に基づき、多国籍展開を進めることを考えるでしょう。ところが、多国籍企業と国内企業の資本コストを比較する実証分析を行うと、多国籍企業の資本コストのほうが小さいとは必ずしも言えないことが分かりました。いまはその原因がどこにあるのかを追究しているところです。

従来の投資理論の多くはリスクとリターンが正確に予測できることを前提としています。しかし、リターンは推定誤差が大きいため、リスクと比べると推定が困難であることが知られています。そうするとリターンの正確な予測を必要とする投資理論は上手く機能しないことになります。私はリターンの難しさについて研究をしながらも、逆にリターンの予測を回避したうえで、どのような投資戦略が考えられるかを研究しています。資本コストと投資戦略の2段構えで、実務に役立つ新たなファイナンス理論の知見を発見したいと希望しています。

経済研究科

首藤 聡一朗 准教授

首藤 聡一朗 准教授
SHUTO, Soichiro
日本語教育学専攻博士後期課程3年

一橋大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(商学)。学術論文「ものづくりのコア・コンピタンス」岸本太一・粂野博行編『中小企業の空洞化適応̶日本の現場から導き出されたモデル』同友館(2014年)、「ビジネスモデルの再構成」伊丹敬之編『日本型ビジネスモデルの中国展開』有斐閣(2013年)ほか。

経営と生産の現場に足を運び生きた情報を重視して分析する

研究のテーマは、情報システムや生産設備などの導入が経営組織に与える影響、中小企業の経営戦略の2つです。研究の手法は聞き取り調査が基本です。現場の情報、そして現場でご活躍の人々の声を重視して研究を進めています。

先行研究や雑誌記事等の二次情報をできるだけ収集・整理したうえで、質問リストを作ってから現場に向かいます。しかし、実際に現場にお伺いさせていただくと私の想定を越えたお話をしていただけることが多いです。

たとえば、次のようなお話です。ある企業に対して情報システム導入の際の組織的困難とその克服のプロセスについてお話をお伺いにいったことがありました。当時、単に情報システムを導入しただけでは成果は上がらず、組織を変革しなければいけないという主張が世間でもなされ始めていた時期です。私としては、どのようにして組織を変革したのかについてたずねるつもりでした。

しかし、実際にお伺いすると私にとってはとても驚くべきことをお話いただけました。その企業では、ベンダー側の事情で情報システム稼動の時期が遅れたのですが、予定の稼動時期、すなわち実際に稼動する前から、在庫削減やリードタイム短縮等の大きな効果がでたというのです。この驚きが、私が博士論文を書き上げる原動力となりました。

フィールドワークを続けていて思うのは、現実はとてもエキサイティングということです。私のような立場の人間から見ると、現場には私の予想を遙かに超える興味深い現象が数多く存在しています。これからも、現場の人々のご協力に深く感謝しながら、出会ったユニークな現象を抽象化し、より広範な現実に適用できる仮説を作っていきます。現場の人々に「時間をとって協力して良かったな」と少しでも思っていただける研究を行っていきたいと考えています。